【試乗記】スズキ・ハスラーの魅力は「コーンフレーク」
「コーンフレークの栄養バランスの五角形がデカいのは、牛乳の栄養素を含んだうえでの五角形になっとる」とは、ご存じM1最高得点を叩き出した「ミルクボーイ」の漫才「コーンフレーク」ネタ。
1月20日に発売開始した軽ワゴン乗用車とSUVを融合させた2代目スズキ・ハスラーの魅力は、「コーンフレーク」である。
2014年1月に発売開始された初代ハスラーは、48万1285台を売り上げ、今やワゴンR、スペーシアと並ぶスズキの大ヒット作。
マーケティングでは「モノよりコトの時代」と言われる。モノ余りの現代、人々は商品を所有することより商品・サービスによって得られる経験に価値を感じてお金を使うようになった。何かをする、何かをできるためのクルマであるかどうかが求められているのだ。
「遊べる軽」をコンセプトにした初代ハスラーがウケた理由は「コトの時代」を具現化した商品だったからだ。決して「最新鋭技術の○○装着」、「クラス最高の●●」が、評価されたわけではない。その点を抑えておかないと、ハスラーの魅力は語れない。
2代目のコンセプトは「もっと遊べる!もっとワクワク!もっとアクティブな軽クロスオーバー」。ボディサイズは全長3395㎜×全幅1475㎜×全高1680mm。ホイールベースは2460mm。初代モデルと比べると、全高が15mm高く、ホイールベースは35mm伸ばされたものの、全長と全幅は同じ。「コンセプト、見た目はいじらず、中身はレベルアップ」というヒット作の2代目という定石に倣ったFMC。
2代目も「コトの時代」を意識した商品づくりを感じたのが、インテリアデザインのアクセントになっている「3連インパネカラーガーニッシュ」。
右から、スズキ軽初採用の4.2インチカラー液晶メーター。メインの140㎞/hまでのスピードメーターを大きくグラフック表示、平均燃費や航続可能距離を小さく表示することで見やすさは格段に上がった。「オープニング」や「アイドリングストップ」はアニメーション表示で遊び心を演出。中央は、スズキ初のメーカーオプション9インチHDディスプレイの大画面ナビ。大変見やすい。左はグローブボックス。カスタマーショップであれば、モニター画面を配したくなるだろう。こういったユーザー側に選択肢を残している部分が、「コトの時代」にマッチした――牛乳の栄養素を加えることを想定した――ハスラーの魅力なのだろう。
「遊び」を強調しているハスラーだが、スズキらしいマジメなクルマ作りは健在。軽、ミニバン、フルサイズセダンいずれの車種から乗り換えても、前後左右の車両感覚を短時間でつかむことができる。スズキ車共通の長所を、ハスラーも受け継いでいる。2代目はリアクォーターガラスが加わったことで、後方の死角がさらに改善された。
走りについて触れておきたい。
今回試乗したのは、新開発R06型エンジン搭載のNA車(2WD)マイルドHVとR06型A型ターボエンジン車(4WD)。
小さいエンジンにターボを付けて高回転で回すというのは、2輪でならしたスズキの得意技。1時間程度の試乗会ではワクワクする一台に違いないのだが、走りに絶対性能を求めるわけではないハスラーのキャラクターから言えば、NA車の実力でも十分であろう。NA車は街乗りを意識した低速から中速域で実力を発揮。スズキ初のデュアルインジェクションシステムとCVTの組み合わせで、燃費と走りを両立させた。
新世代プラットフォーム「HEARTECT」の採用により、ボディ剛性が高くなった。経年のよるボディの軋み音といった不満からも解消されそうだ。
2代目で大きく進化したのが、安全性能「スズキ セーフティ サポート」。ステレオカメラ方式の衝突安全ブレーキ「デュアルカメラブレーキ」、誤発信抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき防止警報機能、先行車発信お知らせ機能、標識認識機能、後退時ブレーキサポートを装備。ターボ車には、全車速での追従機能を備えたアクティブクルーズコントロール、車線逸脱抑制機能をスズキ軽として初採用。
現時点で普及している事故を未然に防ぐ予防安全装備は、すべて盛り込んだという感じだ。
価格は、ハイブリッドGが136万5000円(税込み)から。先代モデルの同じGモデルで1万円ほどアップしているが『スズキ セーフティ サポート』の安全装備をプラスしたことで、実質値下げと言ってもいいだろう。
クルマを活用した遊びやカスタマイズにも、余裕が残せる手ごろな価格も、ハスラーの魅力である。
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