指名委員会等設置会社数は89社、全上場会社の2.3%。日本取締役協会
日本取締役協会(冨山和彦会長<経営共創基盤IGPIグループ会長、日本共創プラットフォーム代表取締役社長> JACD)が「日本企業のコーポレートガバナンス~現状診断と今後の課題」と題したオンライン勉強会を2月9日に開催した。
今回は、リコー社外監査役、日本化薬社外取締役、(公財)ロッテ評議員を務める太田洋・コーポレートガバナンス委員会副委員長(西村あさひ法律事務所 弁護士)が、以下のテーマについて解説した。
・指名委員会等設置会社の設計の柔軟化
・現状の日本企業のコーポレートガバナンスの問題点と課題
・今後の会社法制見直しの課題
2003年4月1日施行、平成14年商法改正により創設された指名委員会等設置会社の数は2022年12月12日現在で89社(東証全上場会社数3799社の約2.3%)、JACD加盟の20社(会員企業全体の10%)。
一方、監査等委員会設置会社の割合は約 38.5%となっている。
創設から20年を経て指名委員会等設置会社に移行した会社における評価は、おおむね良好であると総括した。
一部の会社では、監査等委員会/監査委員会による責任追及訴訟の提起・訴訟追行に取締役会側が圧力をかけるような事例も散見されることから、現行の指名委員会等設置会社制度の硬直的な面を修正し、監査等委員会設置会社の過渡期的側面(監査等委員会の権限が中途半端であること)を解消するため、両社を統合した新たな「委員会等設置会社」制度を創設し、監査役会設置会社と新「委員会等設置会社」との間で、実効的な制度間競争が可能となる状態を創出すべきではないかと問題提起した。
現行の指名委員会等設置会社制度の問題点は以下のような点が上げられる。
①指名委員会の権限は会社提案の取締役選解任議案の決定に限られている(各委員 会メンバーの選定・解職、執行役の選解任や CEO その他の役付執行役の選定・
解職権限は取締役会)一方で、米国の指名委員会とは異なって指名委員会の決定は取締役会決議を以てしても覆せない
②取締役会(全体)と必置 3 委員会(特に監査委員会)との間の権限分配に不明確な点が存在
③多様な委員会の設置など機関設計の多様性・柔軟性が阻害されている可能性
現行の監査等委員会設置会社制度の問題点は
(1) 監査等委員会設置会社については、監査等委員でない取締役の指名・報酬に監査等委員会の意見陳述権がある一方で、東証 1 部/プライム上場会社ではほとんどの会社に任意の指名諮問委員会・報酬諮問委員会が設置されている状態であるにも拘らず、監査等委員会と指名諮問委員会・報酬諮問委員会との権限の重複が問題
(2) 監査等委員会設置会社については、定款に授権規定がある場合又は取締役会の過半数が社外取締役である場合には、取締役会の決議事項は、現行の指名委員会等設置会社と同程度まで取締役の決定に委譲することができるものとされているが、定款で授権規定を設ける事例がほとんどであって、「取締役会の過半数が社外取締役である場合」の例外が空文化しているのではないか。
立法提案として「監査等委員会設置会社制度と指名委員会等設置会社制度とを統合した新『委員会 等設置会社』制度を創設すべきとした。
① 監査役の設置は不要。代わりに監査委員会は必須。監査委員会の構成・権限は基本的に現行会社法下と同様
②指名委員会・報酬委員会の設置は必須とするが、その権限を、現行の指名・報酬委員会のそれと同様とするか、指名・報酬に関する発議 (取締役会への提案)・勧告権を有するのみとするかは、各会社が[定 款 or 取締役会規則]を以て選択できるものとする。なお、指名委員会 の権限を発議・勧告権のみとする場合には、指名委員会の権限範囲を、[定款 or 取締役会規則]を以て、会社提案の取締役の選解任だけでなく、CEO その他の役付執行役の選定・解職及び執行役の選解任にも拡大することを可能とする
③指名委員会・報酬委員会の権限を、指名・報酬に関する発議(取締役会への提案)・勧告権に限定する場合には、総会での意見陳述権を付与する。他方、その場合における指名・報酬に関する決定は取締役会決議事項(執行役への決定権委譲不可)とする
④執行役の設置は必須とし、その選解任は取締役会の権限とする。執行役も株主代表訴訟の対象とする
⑤取締役会の決議事項は、現行の指名委員会等設置会社と同程度まで執行役の決定に委譲できるものとする
⑥監査委員以外の取締役・執行役に対して責任追及訴訟を提起・追行する権限は監査委員会、監査委員たる取締役に対して責任追及訴訟を提起・追行する権限は取締役会に付与する。監査委員会が監査委員以外の取締役・執行役に対して責任追及訴訟を提起・追行する場合には、 取締役・執行役に監査委員会が行う調査への協力義務を負わせる
⑦取締役会は、必置 3 委員会以外に、一定の事項についての発議・勧告権を有する委員会の設置・廃止を決定できるものとする。
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